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~病室~ ミーナ「なんなのこれ・・・・・・。」 まず、ベッドの上に鎮座する狐色の丸い物体、これを物体Aと呼称する。 その物体Aに縋りつくエーリカと引き剥がそうと奮闘するバルクホルン。 これが現在、ミーナの眼前で展開されている光景だ。 正直よく解らない。 だが傍観したままでは始まらないと判断し、とりあえず物体Aに縋りつく寝ぼすけエースを 目標にすえる。 ミーナ「お は よ う フラウ、トゥルーデも。」 エーリカ「あー・・・・・・ミーナ、おはよ・・・う!?」 バルクホルン「お、おはようミーナ。」 実ににこやかに挨拶したはずであるにも拘らず、相手の表情は引き攣り気味である。 エーリカに至っては一瞬で目が覚めてしまったらしい、何故かは謎であるが。 ミーナ「フラウ、とりあえず早く着替えてきて、もう直ぐ朝食の時間よ?」 エーリカ「わ、わかったよ!」 自室から持ち込んだのであろう枕を抱え、脱兎のごとく病室から飛び出して行った。 普段からこれぐらい寝起きが良ければいいのに、とミーナが思うのも仕方のない事だろう。 ミーナ「トゥルーデ、一体なにがあったの?」 バルクホルン「私も朝食の前に僕少尉の様子を見ておこうと思ってな。 来てみたらハルトマンが一緒に寝ているのを発見して、とりあえず起こそう としたんだ。 そしたら先に僕少尉が起きてしまってな。 いきなり人がいて吃驚したのか、尻尾を出して丸まってしまったんだ。 あとは見ての通りだ。 悪い事をしてしまった。」 バルクホルン曰くこの物体A、どうやら僕らしい。 今は毛並みのい良い尻尾で完全に外部から隔離されているのが現状だ。 たしかに防御力は高そうである。 だがこの状態を解くには少々骨が折れるかもしれない。 ミーナ「そう、解ったわ。 トゥルーデも先に食堂に向かっててもらえる?」 バルクホルン「ああ、宮藤たちにも少し遅れると伝えておくよ。」 ミーナ「ええ、お願いね。」 バルクホルンが退室し、病室には物体Aこと僕とミーナの二人きりとなった。 とりあえずベッドの淵に腰掛け、黄金色の毛並みを撫でてみる。 ミーナ(これは・・・・・・手が離せないわ。) その毛並みはとても柔らかく、艶やかで滑る様な手触りを伝えてくる。 ハルトマンがなかなか離れなかったのも頷けると言うものだ。 ミーナ(顔をうずめたくなってしまうわね。 ・・・・・・少しだけならいいかしら。) と、ミーナが考えたときには既に眼前十数センチの所にまで顔を接近させていた。 ここで物体Aがもぞもぞと動き、中から尻尾を掻き分けて僕が顔を覗かせる。 そこは丁度ミーナが顔を近づけていた所だ。 図らずも数センチの距離で見詰め合う事となってしまった二人。 鼻先が触れそうである。 その状態が十秒ほど続いた後、先に動きを見せたのは僕だった。 僕「あの、オハヨウゴザイマス・・・・・・。」 ミーナ「・・・・・・え、あぁ。 おはよう。」 僕「・・・・・・ぇぅ。」 至近距離は少々耐え難いのか、半分ほど顔を引っ込めてしまった。 まだ警戒は続いているらしく、落ち着かない様子だ。 ミーナ「・・・・・・(なにこのカワイイイキモノ) お、驚かせちゃったかしら。 ごめんなさいね?」 僕「ぅ~・・・・・・。 いえ・・・・・・大丈夫です。」 とは言ったものの、未だに居心地悪そうに鼻から上だけ顔を覗かせた状態だ。 ミーナはそんな僕の頭に手を置き、優しく撫で始める。 ミーナ「昨日は大変だったけど、よく頑張ってくれたわね。 結構な難敵だったみたいだけど、おかげで助かったわ。 でも、あまり無茶しちゃ駄目よ?」 僕「はい・・・・・・んぅ。」 撫でられるのが心地良いらしく、僕は目を細めてされるがままとなっている。 そして、ようやく緊張も解れたのか、体を包んでいた尻尾もほどけて小柄な体が露になった。 ミーナ(これは・・・・・・マズイ、マズすぎるわ!) 何やらマズイ事になってしまったらしい。 ちなみに今の僕は成人用の病室着に身を包み、ぺたりとベッドに座り込んだ状態だ。 サイズが合ってないせいか服が少々肌蹴ており、左肩から胸元までが大きく開かれている。 さらに、少し前屈みになっているせいで白い素肌と幾許かの傷跡が見て取れる。 付け加えるとすればこんな所だろうか。 そんな状態で目を閉じて撫でられる感触に身を任せているのが現状だ。 確かに少々無防備すぎるかもしれない。 ミーナ(誘っているの?誘っているのね? ・・・・・・お持ち帰りしちゃおうかしら。 いえ、むしろ此処で頂き―――。) 宮藤「おはよう、僕君。 ミーナさんもおはようございます。」 リネット「おはようございます、ミーナ中佐。 おはよう、僕君。」 ミーナが慌てて入り口の方を見ると割烹着姿の宮藤とエプロン姿のリネットがいた。 極めて危険な思考を巡らし始めていたミーナだったが、結局は二人によってその欲求を発散 させる機会を逸してしまった。 ミーナ「お、おはよう、二人とも。(あ、あぶなかった)」 僕「おはようございます、宮藤軍曹、ビショップ曹長。」 リネット「リーネでいいよ、階級とかもいらないから。 って、あの、えーっと……。」 宮藤「私も階級は付けなくていいからね? あ、玉藻さん、おはようございます。」 僕「あぅ……、玉藻おねーちゃん、おはよう。」 玉藻「おはようございます。 お二人には初めまして、ですね。 僕の使い魔の玉藻と申します。」 ミーナが向き直ると、ベッドの上には僕を膝に乗せて肌蹴た服を整える妖弧の姿があった。 ~食堂~ バルクホルン「で、ハルトマン。 なんで僕少尉のベッドにお前が寝ていたんだ?」 納豆をこねつつバルクホルンが問う。 ちなみにエーリカに因る『病室侵入事件』は既に周知となっており、現在バルクホルン大尉 による尋問が慣行されている。 周りの反応は、呆れ、妬み、興味、等様々である。 エーリカ「えー、オトメの秘密をこんなトコで話すなんて……ィヤン♪///。」 などとの給いつつ顔を赤らめるエーリカ、はぐらかす気なのはみえみえだ。 しかし、そんな事で引き下がるバルクホルンでは無い。 バルクホルン「何がオトメの秘密だ!!。 第一、いくら幼いからって寝床に侵入するとは。 貴様それでも―――」 ミーナ「おはよう、みんな。」 バルクホルンがヒートアップし始めた所でミーナが食堂に入ってきた。 騒がしくなっていた食堂もミーナの登場によっていくらか落ち着きを取り戻す。 坂本「おはよう、ミーナ。」 ペリーヌ「おはようございます、ミーナ中佐。」 シャーロット「おはよう、中佐。」 ルッキーニ「おはよー。」 サーニャ「おはようございます、中佐。」 エイラ「オハヨー、中佐。」 エーリカ「モグモグ」 バルクホルン「ミーナ、僕少尉はどうだったんだ?」 ミーナ「なんとか落ち着いてくれたわ。 今は二人と一緒に食事中でしょうね。」 恐らく二人とも気を使ったのであろう。 宮藤とリネットは此処では無く病室で食事をとるらしい。 シャーロット「そう言えば、宮藤が別に何か作ってたな。」 ルッキーニ「なんだろうねーアレ。」 坂本「おそらく、雑炊か何かだろう。 体力の落ちている時には消化に良い物を食べさせた方が良いからな。 扶桑では、床に伏せっている者には粥や雑炊を食べさせるのが一般的なんだ。」 一同「へぇー」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 芳佳です。 只今、僕君とリーネちゃん、そして玉藻さんと一緒に朝ごはんを食べています。 そう言えば、一部の肉食動物の母親が子供に食事を与える場合には、まず母親が獲物の肉を 咀嚼して柔らかくしてから子供に食べさせるそうですね、口から口に直接。 ……。 ええ、失念してました。 玉藻さんは狐です、そして僕君は人間です。 でも、親子のような間柄な訳で……。 何が起きているのかは以下のリーネちゃんのコメントを持ってお察し頂ければ幸いです。 リネット「え、えっちなのはいけないとおもいますっ!!」 僕君……愛されてるね♪ おぉぅ、舌まではいってるよ……。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 一同「ごちそうさまでした。」 朝食も食べ終わって食後のお茶を飲み始めた頃、再びバルクホルンが問い始めた。 バルクホルン「さて、改めて訊くが何でハルトマンは僕少尉と一緒に寝てたんだ?」 エーリカ「えー、またそれ訊くの~? ……まぁ、ご飯も食べ終わったしいいかな。」 坂本「なんだ、まるで朝食前だと都合が悪かったみたいだな?」 エーリカ「あー、てゆーか朝からお通夜色の雰囲気っていうのに叩き込みたくなかった だけなんだけどね。 ちょっと繊細なのもいることだし、いまは病室だけど。」 今度ははぐらかす事は無く答えるつもりらしい。 しかし気は進まない様子だ。 エイラ「ナンダそれ、また重い話しナノカヨ。」 エーリカ「まぁねー、それが昨日に―――」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ~病室~ こんばんは、エーリカ・ハルトマンです。 只今、僕少尉の寝てる病室にお邪魔してます。 と、言うのも少々事情がありまして。 坂本少佐曰く、僕少尉は添い寝したら巻き込まれるぐらい寝相が悪いそうで。 まぁ、ベッドに入って朝になったら床の上だったっていうぐらい寝相の悪い自分としては 気になる訳ですよ。 他人の寝相と言うものは。 さて、僕少尉の寝姿拝見っと。 僕「・・・・・・う・・・っく・・・・・・うぅ・・・・・・いや・・・だ・・・いっちゃ・・・・・・やだ・・・・・・」 ……んー、ちょっと予想外。 ってゆーかメチャクチャうなされてるよ、この子。 しかも泣いてるし。 最早寝相が悪いってレベルじゃない。 もしかしてこれが毎晩? だとしたら、まともに寝れた事なんて無いんじゃないの? エーリカ「一体どうしたらココまで酷くなるんだよ……。」 そうこうしている内に、手が宙をさまよい始めた。 まるで何かを追い駆けているみたい。 思わず手を握ってしまった。 僕「・・・隊長・・・・・・」 隊長・・・・・・? ああ、前の部隊のか。 そう言えばこの子を残して戦闘不能になったんだっけ。 話しによれば、この子が戦線に居たのは7~8歳の頃だ。 そんな頃に仲間の墜されるところを目の当たりにして、それからはずっと一人。 支えてあげる人も居ないんじゃぁこうなっても仕方ないかな。 ってゆーか使い魔とやらは何してたのさ。 むぅ、それにしてもしっかりと手を握りこまれてしまった。 放してくれる気配はまったく無いね。 準備しておいて良かったよ。 エーリカ「……仕方ないなぁ。」 いつまでもこうしてる訳にも行かないし、かといってほっとくほど薄情にもなれない。 ちょっと言い訳臭い気もするけど、そんな感じで多少の事には動じないだけの覚悟を完了。 枕を置いて隣に侵入。 では、おやすみなさい……。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― エーリカ「―――っていうことがあったんだよ。」 一同「……。」 水を打ったように静まり返った食堂、皆一様に絶句している。 エーリカはそんな彼女らを見渡して軽くため息をついた。 エーリカ「まぁ、あの二人が席を外してたのは幸いだったね。 人の死に目に遇った事の無い子たちにはちょっとヘビーな話しだし。」 ミーナ「それは、たしかにそうね。」 坂本「まぁ、この隊では未だに死者は出ていないからな、幸いな事に。 宮藤の治療魔法の効果も大きいが。」 バルクホルン「ふむ、そういうことか……気を使わせたな、しかしだ。 その割には随分と食い下がっていたな?」 エーリカ「え~、だってあの子すっごくやわこくってぬくいんだもん。 いや~もう抱き心地がいいもんだから放しがたくってさ~。 しかもだよ、あの子ってば擦り寄ってきてしがみついてくるのよ仔犬みたいにさ。 これがまたカワイイのなんのって。 いや、あの子の場合は子狐か。」 一同(そんなにかわいいのか……。) ここにきて鉛のように重かった空気が一変、なんとも気の抜けた物になった。 同席していた者達の表情も和らいでいく。 人の生死に関る話題など続けて欲しくないのが本音なのだろう、口に出す事は無くとも。 この辺りの切り替えはムードメーカーとしては流石と言ってもいいかもしれない。 エーリカ「おかげで久しぶりにベッドの上で朝を迎えられたよ。 いや~、何でかしんないけど昨日はよく寝れたなー。」 ペリーヌ「それは単に、終始ベッドの上で睡眠をとれたと言うだけの事ではありませんの?」 エーリカ「……かもしんない。 う~ん、やっぱり僕君には私のトコに来てもらった方がいいかなー。 主に私の安眠のために。」 だが少々やり過ぎた。 ここで先日の『僕少尉と相部屋権争奪論戦』が再燃したのである。 エイラ「チョットマッター!」 サーニャ「……まったー。」 まず異を唱えるのはエイラとサーニャの二人。 対抗意識は充分に有る様だ。 エイラ「そんなに安眠したけりゃ抱き枕でも買えばイイダロ。」 サーニャ「コクコク」 エーリカ「うっ……。」 エイラ「それに、ルーズすぎる生活習慣に巻き込まない保障ハ?」 サーニャ「コクコクコク」 エーリカ「ううっ……。」 サーニャ「ハルトマンさん……、お部屋、片付けられますか?」 エイラ「無理ダナ。」 エーリカ「グハァッ。 トゥルーデェ~……。」 形勢が極めて悪いと見たエーリカは、隣にいるバルクホルンに援護を求める。 どう見ても自業自得だが。 バルクホルン「お前は生活習慣を少し改めろハルトマン。 しかしだ、私の所ならその様な心配はまったく無いぞ。」 シャーロット「四六時中堅物と一緒じゃ息つまりそうだよなー。」 ルッキーニ「なー」 続いて話しに加わるのはシャーロットとルッキーニの二人である。 こちらも充分にやる気はあるようだ。 バルクホルン「なんだと? 整頓された部屋に規則正しい生活。 それのどこが息が詰まるというんだリベリアン?!」 シャーロット「……真面目な話しな。 あの子と相部屋になったとして、どう扱うつもりなんだ?」 シャーロットも思うところが有るらしく、神妙な面持ちでバルクホルンに問う。 問われたバルクホルンは少々面食らっている様子。 バルクホルン「そ、それは当然、上官として寝食を共にしつつ軍の規律に則った生活と 言うものをみっちり、それこそ我が子に教えるように仕込んでやるつもりだ。 それが何かまずいのか?」 ルッキーニ「その辺の事って、もうとっくに終わらせてるんじゃないかなー」 バルクホルン「ムッ……。」 シャーロット「それもあるけど。 そんなことしたら、どんなに素養のある子でも潰れるだろ……。 只でさえ心身ともにズタボロの状態で此処に来てるんだぞ。」 バルクホルン「ムゥ……なら、お前ならどうするというんだ。 お前も大尉であの子は少尉だ、上官と部下と言う関係以外にどういう 付き合い方があるというんだ?」 シャーロット「私は別に上官だの部下だのなんて気にしないけどね。 私があの子にしてあげられる事なんて、良き友人になる事ぐらいさ。 だけど、せめて力の抜きどころぐらいは作ってやりたいな。 ルッキーニのいい遊び相手にもなってくれそうだし。」 ルッキーニ「あの子が元気になったらいっぱい虫取りとか鬼ごっことかするんだ~。」 バルクホルン「お前達も、もう少し規律と言うものをだな。 しかし友人か……。 ……確かに必要だ…だが……姉として……。」 どうやらかなり揺らいでいるご様子。 そんな彼女にエーリカが「がんばれー」などと声援を送るも聞こえてはいない様だ。 ここで新たに参戦する者が約一名。 ミーナ「でもやっぱり、もともと相部屋だった所にもう一人追加は厳しくないかしら。 私の所なら広さも充分にあるし、ほとんど模様替えする必要もないわ。」 エーリカ「えー、ミーナのトコはまずいんじゃないの~?」 ミーナ「あら、どうして?」 エーリカ「ミーナの部屋って、資料やら書類やら満載じゃん。 中には機密のやつもあるんでしょ? そんな所にホイホイ連れ込んで大丈夫なの?」 ミーナ「……やっぱり、まずいかしら?」 一同「うん!」 全員から一斉に力いっぱい頷かれた。 そしてミーナはいじけ始める。 ミーナ「そんなに全力で頷かなくてもいいじゃない……。 私だってあんな可愛い子をぷにぷにしたりもふもふしたりこねこねしたりして 癒されたかったのよ……。」 そんなミーナの肩に手を置いて優しく語り掛ける人物が一人。 坂本「ミーナ……。」 ミーナ「美緒……。」 坂本「疲れてるなら、そろそろ休暇でも取って羽を伸ばして来た方がいい。 それに幼子に逆セクハラまがいの行いはまずいぞ。 指揮官以前に人として。」 ミーナは完全に止めを刺されたらしく崩れ落ちる。 その様子を尻目に下手人は小さくガッツポーズ。 ミーナ「そんなんじゃないわよ~……。」 坂本「まぁ、ミーナの所はまずいかもしれないが、私の所なら何の問題も―――」 ペリーヌ「なりませんわっ!! 男女七歳にして同禽せずと申しまして、なにか間違いがあってからでは遅いでは ございませんかっ!! それに坂本少佐のお部屋には刀とか刀とか刀とか、子供の手の届く所に置いては いけない物がありますわ!!」 ここにきて終始静観に徹すると思われたペリーヌが乱入。 一気に捲くし立てた。 流石の坂本少佐もやや押されぎみの様だ。 坂本「そ、そう……か? しかし、私の所なら布団を一式追加すれば直ぐにでも入居可能なんだが……。」 ペリーヌ「な り ま せ ん!!」 坂本「おぉぅ……。」 流石に勢いに押されきったのか、坂本美緒が戦線より離脱。 事態は混迷を極めつつある。 ルッキーニ「じゃー、ペリーヌは誰のトコならいいのー?」 ルッキーニの一言で、視線がペリーヌに集中した。 この中で僕の受け入れを表明していないのはペリーヌのみである。 彼女の推薦を得られれば、大きなアドバンテージを取れるかもしれない。 皆はそう考えていたが、そうは問屋が卸す事は無かった。 ペリーヌ「私は、先日も申上げた通り。 個室に入っていただくべきだと考えますわ。 先日のお話しでは、ずいぶんと強力な使い魔をお持ちのご様子。 しかも人の形も採れて単独での行動も行えるとなると、実質二人を受け入れる 形になりますわ。 流石に定員は超えるでしょう。」 面倒見も良い様ですし、と締めくくる。 此処まで決め手を打つことの出来た物はおらず、事態は振り出しに戻った。 全員が次の一手を考えている所に、宮藤、リネットの両名が食堂へと戻ってくる。 リネット・宮藤「た、只今戻りました……///」 坂本「お、二人とも戻ったか……ん? どうした、二人とも顔を赤くして。」 リネット「な、何でもないですぅ……。///」 宮藤「いやー、ちょっと刺激の強い光景を目にしまして。///」 リネット「よ、芳佳ちゃんっ……。」 バルクホルン「刺激の強い……? ……僕少尉に何かあったのか?」 宮藤「その~、朝食は玉藻さんが食べさせてたんですけど。 食べさせ方が狐さん流のやり方だったんですよね。」 一同「狐さん流?」 皆一様に首をかしげる。 そんな中、使い魔に狐を持つ一名が理解の色を見せた。 エイラ「もしかして……口移しカ?」 リネット・宮藤「そーなんです……。」 宮藤「余にも自然にやってた物ですから一寸止める気にはならなかったんですけどね。 アハハハ……。」 リネット「僕君は一寸恥ずかしそうだったけど……。」 一同沈黙、思い浮かべてしまったのか皆一様に顔が紅く染まっていた。 そんな雰囲気に耐えかねたのか、ルッキーニが先の話題を二人にもふる。 ルッキーニ「ねぇねぇ芳佳ぁ、リーネェ。 いま僕を誰の部屋に入れるか話してたんだけどー。 二人は誰の部屋がいいとおもう?」 宮藤「え、またその話しなんだ……。 私達のトコがもっと広かったらよかったんだけどね。 玉藻さんも来るし。」 リネット「でも、あの雰囲気がいつもって言うのはちょっと……。」 一同「……。」 それから様々な意見が出されるも、結局決め手を打てた者は居らず、僕少尉の希望次第 という実に消極的な結論を持って論戦は幕を閉じた。 ~基地内・桟橋~ 丸一日の遅れで到着した日照丸から急ピッチで物資が降ろされていく。 かなりの量の荷物のため、基地内のウィッチ以外のほぼ全員が搬出と整理に駆り出されていた。 姿が見えないのは当番のレーダー員と通信兼管制員、後は衛兵ぐらいのものだろうか。 そんな中、扶桑海軍の仕官服を身に纏った長身の男を先頭に新任の兵と思われる男達が 整列していた。 男達の前にミーナと坂本と整備兵長が立ち、鋭い視線を巡らす。 新任者達はその視線に顔を強張らせている様子だが、仕官服の男は気にしていない様子だ。 男が気合の入った大声で号令を懸ける。 俺「気をーつけぃっ!!」 ザッ! 俺「敬礼っ!!」 一糸乱れぬ動作で敬礼を送る。 受け取ったミーナと坂本と整備兵長も返礼を送った。 ミーナ「どうぞ、楽にしてください。」 俺「直れ、休め!!」 全員が休めの体勢をとった事を確認してさらに声を張り上げた。 俺「本日、マルキュウサンマルより、俺特務少尉以下、通信兼管制員一名、電探員一名 飛行脚整備員三名、局地戦闘飛行脚・震電二式甲型及び乙型運用試験班員六名、 第501統合戦闘航空団ロマーニャ基地に着任いたします。」 ミーナ「野郎大尉が居られないようですが、どちらに?」 俺「野郎大尉は先日の暴挙、並びに薬物不法所持の現行犯により拘束、まもなく……。」 野郎「タスケテー」 俺「失礼、只今積み降ろし中です。」 三人が船の方に目を向けると、随分と手の込んだ縛り方(亀甲縛り)で身動きを封じられた 野郎がクレーンで船から降ろされる所だった。 三人「ブッ……。」 ミーナ「ププ……コホン、解りました。 マルキュウサンマル、俺特務少尉以下十一名の着任を認めます。 後、連合軍総本部議会扶桑代表、山本五十六中将閣下より、書類と運用試験副責任者 への封書が有ります。 確認願います。」 ミーナから俺に書類が渡される。 内容を確認しニヤリと俺が笑った。 そして、封書を開く。 封書を読み進めるうちに困惑の色に染まっていく俺の顔。 なにやらとんでもない内容だったご様子。 ミーナ「あのー、なにか御座いましたか?」 俺「あー、こちらも命令書だった様です。 内容は、野郎大尉が任務遂行に不適格と判断された場合。 使用可能な階級の最上位の物に固定し。 運用試験責任者代行、並びに第501統合戦闘航空団の指揮下にて試験航空歩兵の任を全うせよ。 との事です。 他にも細々と有りますが、それはまた後ほど……。」 ミーナ「はぁ……、そうですか。 それでは新任の皆さんは整備兵長に、俺特務少尉は私達に着いて来て下さい。」 新任者一同「了解!!」
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飯田ぽち。による少年漫画及び成人向け同人誌。 少年マンガ版は作者Twitterにて全話閲覧可能(2019/11/17現在) おね ショタ 名前 千夜(ちや) 夕(ゆう) 年齢 不明(外見は20歳前後) 14歳 身長 172cm~180cm 152cm あらすじ
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あにわん!は、「あにわん!」製作委員会が主催するオープン大会である。 正式名称は、アニメ ゲームフリークによる基本問題実力No.1決定戦「あにわん!」。 概要 漫画・アニメ・ゲーム・特撮など、いわゆる青い問題限定でナンバーワンを決める大会。 大会の企画構成と出題傾向(短文基本問題)はabcに準じている。ただし、参加資格は学生限定というわけではなくフルオープンである。また、参加にあたってハンドルネームを名乗ることも可能。 一部主要スタッフが賢押杯と共通している。 大会のナンバリングは、アニメの第2期以降のタイトルにありがちな「末尾の"!"の個数」で表される。 ルール 基本的なルールはabcに準じる。 本記事では、abcとの相違点についてのみ特記する。 1R:150問4択ペーパークイズ(ALL→48) 1R通過者にネームプレートは与えられないが、2Rのアドバンテージに応じて以下の色が与えられ、得点表示スクリーンに反映される。 1~4位 5~12位 13~24位 25~48位 ■Blue ■Cyan ■Light Blue White 2R:連答つき5○2×クイズ ((12→5)×4) 3R:コース別クイズ "Number 10" ((5→2)×4) コースへのエントリー時は、ネームプレートの上げ下げではなく挙手で行う。 10up-down Swedish 10 10by10 Freeze 10(第4回より) 10○10×(第3回まで) Extra Round 1st Step 第2回まで サバイバル筆記クイズ(abcと同様)。 第3回 スマートフォンアプリ「Kahoot!」のChallengeモードを使った四択クイズ。 15問出題し、正解数の多い順に最大12名がSecond Step進出。 第4回 サバイバル筆記クイズ(abcと同様)。 2nd Step:5○1×クイズ Semi-Final:3セット制タイムレース"Nine Hundred"(Max9→3) Final:トリプルセブン (3→1) 7(なな) 第2回より併設された団体戦(第4回では開催されず)。正式名は、アニメ&ゲームフリークによる早押しクイズチーム日本一決定戦「7(なな) 20XX」。 基本は7人1チームで参加する。ただし、チームには5~10名を登録させることができる。 チームを組む際には、「全員に何らかの共通点を持つこと」(例:同じクイズサークルに所属している、同じ作品のファン、同じ地方出身など)という条件が課せられる。 チーム名の末尾には、アニメ『ガールズ パンツァー』にちなみ「㌠」がつけられるのが特徴。 問題にはあらかじめ以下の7つのジャンルが割り当てられており、勝負の要となる。 漫画(漫画家を含む) アニメ作品 電源ゲーム ノベル 特撮 人物(声優、歌手、クリエイター等) ホビー 予選(最大30チーム→5+1チーム) 2017 最大6チーム×5組に分かれて対戦する。 各チームには2つずつの早押しボタンが与えられ、1つのボタンにつき1名がつくことができる。 出題前にジャンル(先述の7種 「その他」の全8種のいずれか)が宣告されるので、それに応じて読み上げが開始されるまでの間にメンバーをチェンジすることができる。 正解したメンバーは解答権を失い、舞台から降壇する。最も早く5人が正解した1チームが決勝進出となる。 誤答の場合は、3カウント以内に「誤答メンバーが解答権を失い降壇」「チームの早押し機を1つ放棄」のいずれかを選択する。 早押しボタンが1つの状態で誤答し、かつ降壇するメンバーもいなくなったチームは失格。 各組30問限定。 各組で勝ち抜けた全5チームに加え、敗退チーム(失格になったチームを除く)のうち最小問題数で4問正解した1チームがワイルドカードとして決勝進出となる。問題数が同じだったり該当チームがいないために決着がつかない場合は、3問正解にかかった問題数→2問正解にかかった問題数→1問正解にかかった問題数の順に判定する。 2019 最大6チーム×5組に分かれて対戦する。各試合は部屋に分かれて同時進行で行う。 各チームには2つずつの早押しボタンが与えられ、1つのボタンにつき1名がつくことができる。 先述の7ジャンルが上から順に10問ずつ出題される。1つのジャンルを連続10問出題したのちに、次のジャンルの10問が出題される形式である。 大会当日の受付時に、チーム内で各ジャンルを担当するメンバーを記入した表を提出する。予選参加メンバーは全員必ず1ジャンル以上は担当しなければならない。試合中はその表に従いボタンにつく(この担当ジャンルはあくまで予選だけのものであり、決勝には影響しない)。 1問正解でそのチームに1ポイント獲得。 誤答の場合は、「そのメンバーのみジャンル終了まで解答権剥奪」かつ「他の全チームが1ポイント獲得」。 全70問終了後、組の中で最もポイントが多い1チームが決勝進出。さらに、敗退チームのうち最も獲得ポイントが多かった1チームもワイルドカードとして決勝進出。 決勝(6チーム→優勝) 6チーム対抗の早押しクイズ。チームの全メンバーが参加する。 問題は、先述の7ジャンルが上から順に1問ずつ周期的に出題される。 各チームには2つずつの早押しボタンが与えられ、1つのボタンにつき1名がつくことができる。また、前の問題の正誤判定後から読み上げが開始されるまでの間にメンバーをチェンジすることができる。 正解すると、そのジャンルを「獲得」。予選と異なり、正解したメンバーも引き続きクイズに参加することができる。 誤答の場合は、「そのメンバーが解答権を失い降壇」かつ「すでに獲得したジャンルを1つ失う」。また、4回目の誤答で失格となる。 最も早く7つ全てのジャンルを獲得したチームが優勝となる。 70問(7ジャンル×10周)限定。全問題終了時に7ジャンルを獲得したチームが発生しなかった場合は、「最終獲得ジャンル数」→「総正解数」→「サドンデス」の順で判定する。 あにわん?Another/あにわん!Premium 賢押杯における「Alt.」や「Abs.」のような大会。 「あにわん?Another」は全国各地で開催し参加制限なし、 「あにわん!Premium」は東京で開催し、過去の大会で1Rのペーパークイズを通過した人のみ参加可能。 優勝者決定後、第1回は全国一斉100問4択ペーパークイズ、第2回は全会場でみんなで早押しクイズによる早押し大会が行われた。 過去の大会 あにわん! 大会名 開催日 開催地 参加者数 優勝 決勝進出 ペーパー1位 あにわん! 2015年9月13日 大田区民センター 117名 杉山喬亮 しんほむらユウイ ユウイ あにわん!! 2017年1月22日 大田区民センター 162名 しんほむら NIKユウイ ユウイ あにわん!!! 2019年9月22日 和光市民文化センター サンアゼリア 152名 ガンナー かるねこーん ユウイ あにわん!!!! 2023年7月17日 朝霞市民会館ゆめぱれす 81名 いっとー 蟷螂白魔術師 いっとー 7(なな) 大会名 参加チーム数 優勝 7(なな) 2017 18チーム(124名) 名Q会ぁぉぃ勢㌠ 7(なな) 2019 15チーム(107名) Tokyo Qmattro Club㌠ Another Premium Another 回数 開催日 開催地 総参加者数 第1回 2018年8月5日 札幌・仙台・東京東部・東京西部(八王子)・松本名古屋・京都・大阪・岡山(倉敷)・北九州 196名 第2回 2021年9月26日 さいたま・東京東部・東京西部(立川)・川崎名古屋・大阪・北九州(会場開催)札幌・京都・岡山・全国共通(オンライン開催) 158名 Premium 回数 開催日 開催地 参加者数 優勝者 備考 第1回 2018年8月5日 みらい館大明 32名 かる ユウイ(ペーパークイズ1位) 第2回 2021年9月26日 雑司が谷地域文化創造館 12名 ぶどう よしだか(みんはや1位) 外部リンク 第4回公式サイト 公式ブログ YouTube(第3回のプレイリスト)
https://w.atwiki.jp/anyaaan/pages/44.html
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【作品詳細】 【イマジンあにめ1】 【イマジンあにめ2】 【イマジンらじお】 【関連するページ】 【作品詳細】 モモタロスたちを主人公にしたアニメ作品としてアニメイトから発売されたOVA。 TVシリーズとは異なった独特の世界観を持った作品であるが、脚本にはTVシリーズを担当した脚本家や声優が関わっている。 同じアニメ作品ではあるが、クレヨンしんちゃん 真夏の夜に オラ 参上! 嵐を呼ぶ 電王VSしん王 60分スペシャル!!とイラストの描き方が異なる。 【イマジンあにめ1】 モモタロスのももたろう モモタロスのももたろうパート2 ウラタロスのずるやすみ キンちゃんの初恋 リュウタローのひみつ デネブキャンディーができるまで マージマジ・マジーク お姉ちゃんからの手紙 スーパードクター・モモ イマジン宇宙旅行 【イマジンあにめ2】 てるてるリュウタ キンちゃんのふっさり モモタロスの花占い 決めゼリフを考えよう がんばれウルフ ウラさんは名探偵 イマジンマート-ジークはだいじょうぶだぁ バカモモVSハナクソ女 ドキュメント・ザ・電車ライダー ウラ島太郎 モモタロスよ永遠に イマジン終着駅 【イマジンらじお】 アニメイトが自社から「イマジンあにめ」シリーズが出されていることを利用した2008年のラジオCM。 アニ店特急というアニメイトのイベントのためのCMであり、このイベントは関智一、関俊彦、三木眞一郎、岩田光央(未)などがメインMCをつとめるイベントであり、遊佐浩二や鈴村健一もゲストとして参加している。 CMには、リュウタロスとピンクラビットイマジンが登場する。 【関連するページ】 リュウタ 仮面ライダー電王(第8作) 劇場版3 さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン
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~ロンドン・連合軍本部・扶桑代表執務室~ 扶桑代表「酷いものだな・・・」 夕日に照らされる中そう言ったのは初老に近づいた男性、扶桑代表だ。 この日に朝に発生した戦闘の記録と抗議文の総てに一通り目を通し 一日の疲れが一気に吹き出た様な顔でため息をつく。 扶桑代表「それで、何がお望みかね?ミーナ中佐。」 ミーナ「野郎大尉の即時帰国を。」 正直、この要求がそのまま通るとは思っていない。 だが、意思表示と言うものはしておかなければならない。 向こうも承知の上なのは明白だとしてもだ。 扶桑代表「気持ちは解らんでも無いが、仮にも兵器開発の総仕上げとも言うべき 運用試験の責任者をそう簡単に帰国させる訳にもいかんのだが・・・。」 ミーナ「でしたら、テスト・ウィッチに関する指揮、監督権その他一切の権限を委譲願います。 なにかしらのテストを行う際には総て此方を通してから行って下さい。 これが第501統合戦闘航空団の基地内で試験を行う条件です。」 これが此方の本来の要求であり最低条件でもある。 さて、ここからどう出てくるか。 扶桑代表「理由は・・・・・・聞くまでもないか。 よかろう、書類を用意する。 少々時間を頂けるかな?」 ミーナ「あ・・・はい、お忙しいところ感謝します。」 扶桑代表「かまわんよ、たまには残業もして見るものだ。 下のカフェで茶でも飲んでいてくれ給え。 仕上がり次第、呼びに行かせよう。」 ミーナ「解りました、では失礼します。」 一礼し、部屋を出てカフェに向かった。 扶桑代表「まったく・・・手間をかけさせおって。」 一筆認めつつ、思わずつぶやく。 秘書官「しかし、これで随分やりやすくなったのでは?」 どうやら秘書官に聞こえていた様だ. 確かに、と頷いた。 扶桑代表「この試験自体は実戦の中でやらねば意味の無い物だったからな。 あの子を奴の手から離れさせるには丁度いい。」 奴自身もそう長くないしな、と締め括る。 秘書官「あの子、僕少尉ですか・・・・・・受け入れてくれるでしょうか。」 その心配は無いだろう、でなければ眩暈がするほど辛辣な抗議文付きで 指揮権を獲りに来る真似など出来はすまい。 扶桑代表「これ、読んでみろ。」 秘書官がタイプ打ちの手を止め抗議文を読む。 顔色が凄まじい早さで変わっていくのが面白い。 秘書官「うわぁ・・・ここまで書きますか。 まぁ、これなら杞憂かもしれませんね。」 その内容を要約すれば ―――怪我した幼子を盾にするような輩送ってくるとか何考えとんじゃワレゴルァ。 次にいらんことしたら全員基地から叩き出すさかいよぉ憶えとけやこのボケナス。 ウィッチは置いとくけどね――― だった。 ミーナ「ずいぶんあっさり片付いたわね・・・。」 と、呟きながらカフェのある階に降りる。 そう言えば今日は休養日だった、どうせなら一番高いのを飲んでやろうか。 などと考えつつ店頭のメニューを眺めていると聞きなれた声が耳に入った。 ガランド「―――お前と言う奴は・・・ん?ミーナ中佐じゃないか。」 ルーデル「む・・・久しいな、ミーナ。」 カールスラント空軍ウィッチ隊総監、アドルフィーネ・ガランド少将と カールスラント空軍第二急降下爆撃航空団司令、ハンナ・U・ルーデル大佐だった。 とりあえずご一緒に、とテーブルに陣取りそれぞれ注文をウェイターに伝える。 ルーデル大佐は「水でいい」とか言いだしガランド少将に無理やり決められていたが。 ガランド「ミーナからも何とか言ってやってくれないか? コイツ、此処2年ほど休暇を摂ろうとしないんだ。」 ルーデル「睡眠も休養も充分に摂っている、必要ない。」 そんやりとりをしつつ紅茶を味わう。 ミーナ「そうなんですか? それは流石に溜め込みすぎだと思いますよ?」 ガランド「だ、そうだぞルーデル? 挙句に指令に収まりながら未だに前線を飛び続けて・・・・・・・ お前、この前の勲章授与の時だって 「私に今後、地上勤務を勧めないなら受け取ろう」 なんて皇帝陛下に言い放ったそうじゃないか。 その話しを聞いた時は眩暈がしたぞ。」 それは黄金柏葉剣付ダイヤモンド騎士鉄十字勲章の時の事だろうか。 なんでも、ルーデル大佐の為に作られた勲章だとか。 扶桑のウィッチも無茶をすると何度も思ったが、カールスラントも負けてはなかったらしい。 ミーナ「あの話しはほんとうだったんですか。 それじゃ、休暇も摂らないと部下の方たちも心配するでしょう。」 ルーデル「別にある物を使わないというだけの話しだ、問題ないだろう。 それよりもだ、定期報告でもないだろうに此処に来るとは珍しいな。 なにがあった?」 どうやら話題を逸らしたかったらしい、バレバレだけど。 ガランド「話しを逸らすな・・・・・・まあいい。 そう言えばそうだな、問題事でもあったか?」 ミーナ「それなんですけどね、今日、扶桑から新任のウィッチが着任しまして・・・・・・」 と、今日あった事を手短に話す。 二人の顔色がみるみる変わっていくのが何とも言えない。 なんだかお茶がまずくなりそう・・・・・・ならないけど。 ガランド「扶桑の技術者は現場と言う物を見た事が無いのか? そんな子を戦場に送り出すとは・・・・・・」 ルーデル「扶桑には、あの子のような子がまだいたんだな・・・・・・」 なにやら物凄く気になる事を聞いた。 ミーナ「そんな子がいたんですか?」 ルーデル「・・・・・・」 ぷいっと、そっぽを向かれてしまった。 ガランド「・・・今はもう届かない、彼女の想い人だ。 42年に行われた東部戦線北端のブリザード作戦は知っているか?」 ミーナ「いえ、あまり詳しくは・・・。」 ルーデル「おい、ガランド・・・・・・。」 ガランド「いいじゃないかルーデル、あれからもう二年以上だろう。 何時までも引きずっていてはあの子もいい顔はしないんじゃないか?。」 もしかしたら、あの子の関係者かもしれないしな、と付け加える。 此処でブリザード作戦の話しを聞く事になるとは思っても見なかった。 ブリザード作戦と言えば東部戦線最大の謎と言われている。 陸、空、両方からの一斉攻撃によりネウロイの巣を攻略する作戦だったが陸軍の誰かが タイミングを間違えて打ち始め失敗した作戦。 しかし、撤退後に送られた偵察部隊によって巣の消滅が確認された。 だれが、どんな手段で行ったのか、それとも単に移動しただけなのか。 成功とも失敗ともとれない不可解な事件と言われている。 そう言えば確認を行った偵察部隊も扶桑から派遣されていたと聞いた。 ガランド「その作戦にルーデルも参加してたんだ。 その時前線基地に使っていた第511統合戦闘航空団の基地にいたんだそうだ。」 ルーデル大佐を見る、ますます不機嫌になっていたがその瞳には深い悲しみが見て取れた。 ルーデル「あの作戦は、私にとって今までで最大の、いや、生涯最大の汚点だ。 恐らく、当時作戦に参加した部下たちも、夜間哨戒に派遣されたハイデマリーも 同じだろう。 まだ8歳になったばかりだったあの子を前線に残したまま、救援にも向かえず おめおめと撤退したんだ。 これほど情けない話しがあるか。」 ガランド「・・・私にとってもそれは同じだよ。 さらに本部職員の怠慢とはいえ、その子に半年も一人で戦わせていたんだ。」 驚いた、まさかそんな事があったとは。 ミーナ「そんな事があったなんて、それに半年間一人でとはどういうことです?」 ガランド「あぁ、以前、各前線の基地で過剰に損害を報告して補給や人員の補充を行う 事案が頻発していたんだ。 丁度その頃に第511統合戦闘航空団がその子を残して戦闘不能になったらしい。 それでも戦果を挙げ続けるものだから補充の要請を受け取った直後に破棄して いてな、基地指令の訴えも聞き入れられなかった。 理由は、大編隊を向かわせなければ対応出来ない様な敵に一人で勝てる訳が無い。 損害の過剰報告で物資と人員を得るつもりだろうと思った、だそうだ。」 確かに一時期、補給に手間のかかる時期があった。 不憫な、と思うと同時に妙に納得させられた。 美緒も芳佳も、能力さえつりあえば迷わず戦いを選ぶ、そんな気がした。 ミーナ「扶桑のウィッチって無茶をする子ばっかりなんでしょうか・・・」 ガランド「そう言う気質なのかもな、扶桑の人間と言うものは・・・」 ルーデル「それでもあの子に関しては此方の責任だ。 あの子は最強の名を冠するにふさわしいウィッチだった。 あの子は素敵な女性になって幸福を掴む事も、栄光と共に更なる高みを目指す 事も出来たんだ。」 ミーナ「・・・ルーデル大佐にそこまで言わせるなんて、どんな子だったんですか?」 ルーデル「・・・完成されたオールラウンダーだな。 いくつもの機種を使いこなし、寝る間も食う間も惜しんで飛び続けていた。 昼夜を問わず、爆撃、格闘戦をこなし、低空から高空まで総ての空域で 無類の強さを発揮した。 夜間哨戒では、まだひよっこ同然だったハイデマリーを上手く引っ張っていた。 私では到底追いつけない、そんな領域にあの子はいたんだ。 技量、精神、魔力、その総てにおいてな。 ・・・ナインテイル、そう呼ばれた幼いエースだ。」 そこに在るのはもはや届かざる者への信仰にも似た憧憬だろうか。 カールスラント最強の爆撃王すら憧れを抱いたあの子、ナインテイルと言う人物。 ミーナ「・・・・・・少し似てますね、彼に。 もしかしたら、同窓生かもしれません。 歳も同じですし。」 ガランド「そうなのか? 確かにそんな鍛え方が出来る所がいくつもあるとは思えないけど。」 ミーナ「はい、ウチの隊の坂本少佐に性能が突出しすぎて戦力として扱いにくいと言わせる 新型の機体を使いこなし今日出現したネウロイを一人で撃破寸前まで追い詰めて いたそうです。 それも近くに居た輸送船にシールドを遠隔で展開したままたっだとか。 敵を撃破した際も彼の提案による手法でおこなったそうです。」 ルーデル「シールドの遠隔展開だと? ミーナ、本当なのか?」 珍しく食いついてきた、何かあるのか? ミーナ「はい、何でも輸送船を覆うほど大きなシールドだったとか。 ・・・・・・でもそれが何か?」 ルーデル「・・・・・・あの子も使っていたんだ。 それで私達とハイデマリーも助けられたこともある。 練習すれば出来るとはあの子も言っていたが・・・。」 ガランド「それは気になるな。 扶桑の新型機にかつてのエースと同じ技を使う同い年のウィッチか。 男の子だけど、やはり関係者と見ていいだろうな。 どうだルーデル、一度見に行って見ようか?」 ルーデル「そうだな、それがいいカも知れん。」 なにやら嬉しそうに少将が頷いた。 ガランド「よし、これでようやく休暇を消費できるな。」 ルーデル「・・・・・・おい、どういうことだそれは。」 ガランド「当然だろう? そもそも畑違いの所に行くんだから。 しかも視察に同行するとはいえ完全に私情で、な訳だし。」 ルーデル「くっ・・・・・・し、仕方ないな。」 ガランド「そうだ、どうせならハイデマリーも呼ぼう。 彼女も休暇を溜め込んでいて問題になっていたんだ。 どうせロマーニャに行くならみやげ物の一つも頼まれるだろうからいっその事 一週間ぐらい宿でも取って観光でもして来たらいい。」 ルーデル「おいガランド、なにを勝手に話しを広げている?」 ガランド「いや、この前に陛下から休暇を溜め込んでる奴に無理矢理にでも休暇を取らせろ と頼まれていたんだ、丁度いい機会だからここらで一気に休んでもらおうと。」 ルーデル「余計なお世話だ。 それに何故わざわざ休みを取ってまで都市部を動き回らねばならんのだ。 そんな疲れに行くような真似をするぐらいなら山にでも入っていた方がましだ。」 ガランド「お前がそれでいいならかまわないけどな、いくらなんでも潤い無さ過ぎだろう それは。 枯れるの早まるぞ?色々と。」 ルーデル「~~~っ、やかましいわ――――――っ!!」 なにやら妙な方向に話しが向かってしまった。 お茶のお代わりでも頼もうかと周りを見渡すと、丁度、扶桑代表の秘書官がカフェに入って 来るところが目に入った。 ~基地内・医務室~ パチン、パチンと縫合した糸を切る音が響く。 女医「まさか、午前中に縫合した箇所を午後に抜糸することになるとは思わなかったですね。 ほぼ完治してますよ。」 関心すべきか呆れるべきか、そんな複雑な顔で先生が感想を述べながら抜糸した所を消毒 していく。 抜糸も終了した様だ。 宮藤は精も根も尽き果てた、とでも言いたげに僕少尉の眠るベッドへ突っ伏した。 宮藤「はひ~、もう絞りかす程も出ませんよぉ~・・・」 坂本「見事だ宮藤、しっかり任務を遂行できたじゃないか。 良くやったな。」 労いを言ってやると突っ伏しながらも「えへへ~」などと笑い声を上げてくる。 だが、流石に声は弱弱しい、まぁ仕方ないか。 宮藤「まぁ、今回は全力でやらなきゃいけなかったですし。 それに手術後って麻酔が切れた後が結構つらいみたいなんですよね。 麻酔が切れる前に終わらせられてよかったですよ。」 のそのそと起き上がりながらの給った。 確かにあれは中々に辛い。 宮藤「あ・・・先生、僕少尉の負傷って事故とかじゃなくてやっぱり・・・・・・。」 ・・・私としてはそっちが本題だ。 正直な話し、一番聞きたいことだったのだが切り出しかねていた。 宮藤は察しや遠慮と言ったものが無いが、こういうときには返って助かる。 女医「意図的に負わされた負傷、でしょうね・・・・・・。 事故や戦闘で、なんて話しはありがちですけどこんなに都合よく胴体部に集中する はずも在りませんし。 それに何よりも・・・・・・」 シーツを捲る。 傷跡だらけの体が痛々しい、その中でも更に異質な傷跡。 右胸部にある直径1センチほどの火傷と思われる痕が三つ。 女医「煙草でしょうね・・・。 工場なんかでしたら溶接の火球で、と言うこともあるんですけど僕少尉は・・・。」 彼はウィッチだ、そんな作業には関らないしそんな都合よく三つも同じ怪我を負う偶然 など有り得ない。 坂本「先生、この事はミーナ中佐には・・・?」 女医「伝えてあります。 あと、診断報告書にも記載してあります。」 ・・・・・・詰んだな。 野郎とか言う男、軍に所属しながら軍規も倫理も知らんような振る舞いをしていたが最早 軍法会議は免れない処にまで来ている。 奴の所業だと証明されれば銃殺刑も在るかも知れない、まぁ自業自得だが。 宮藤「僕少尉は、一体どれだけの痛みに耐え続けて来たんでしょうか・・・・・・。 普通なら学校に行ったり友達と遊んだりしてる歳なのに・・・・・・なんだろうこれ?」 坂本「何かあったか?宮藤。」 なにか気になる所があるらしい。 胸部中央にある痕に触れ、首をかしげている。 宮藤「この痕、手術痕だと思うんですけど。 何か病気でもしてたんでしょうか?」 女医「その様ですね、割と新しい物のようですが。」 レントゲン写真をライトにかざし先生まで「妙ですね」と首をかしげ始めた。 医療に明るくない私にはまったくついていけない。 坂本「何かありましたか?」 女医「いえ、何も無いんですよ。 肋骨を開いた痕跡が。」 どういう事だろうか、素人目に見てもかなり大きく開いたであろう胸部の手術痕に肋骨を 開いた痕が無いというのはおかしな話しだ。 宮藤「こんな所を開くなんて肺か心臓の手術ぐらいだと思うんですけど・・・ってアレ? 耳と尻尾がでてきましたよ?」 坂本「何?」 シーツをとって見た。 見ると狐の耳と9本もの長い尾が出てきている。 やはり、アレだろうか。 女医「あらあら。」 宮藤「おー。」 ・・・そう言えばまだ服を着せて無かったな。 むぅ・・・・・・歳の割りに中々立派・・・なのか? よく解らんが。 それにしても随分落ち着いているな?宮藤。 ? 「ソコが気になりますか?」 坂本「い、いやソコではなくてだな///・・・・・・だれだ?」 辺りを見回す、僕少尉の体から光る何かが飛び出すのが見えた。 ベッドの横、宮藤の隣に降り立ったそれは瞬く間に人の形をとる。 玉藻「主・・・僕の使い魔の玉藻と申します。 白面金毛九尾の狐・・・と言えばお解かりいただけますでしょうか。 この度は主を助けていただき、真に有難うございます。」 そこに居たのは絶世の美貌と豊満な肢体を持つ女性の姿をとった妖弧。 さらに一礼と共に名乗られてしまった、ならば此方も名乗らねば。 坂本「坂本美緒だ。」 宮藤「み、宮藤芳佳です、ハァハァ。」 女医「女医です。」 宮藤、着物の胸元から零れ落ちんばかりの大きさだがハァハァするな、とりあえず。 お前の趣味はとやかく言わんが相手は伝説の妖弧だぞ? 玉藻「・・・で、気になりますか?ソコ。」 慌ててシーツをかけ直した。 気になどなっていない、と己に言い聞かせつつ向き直る。 坂本「手術痕の方なら気になるな。 しかし、今しがた気になることが増えてしまったぞ。 玉藻の前。」 宮藤「私はむしろ玉藻さんのおっきいのが気になってしまいますっ。 主に張りとか柔らかさとかっ!」 お前、判断能力鈍ってないか? 休んでてもいいんだぞ? 玉藻「確かめてもいいですよ?」 宮藤「いいんですか?ではお言葉に甘えて・・・えへへぇ~。」 坂本「いいのか・・・・・・。」 宮藤が飛びついてしまった。 完全に顔が埋まりきってるなーアレ。 坂本「もう好きにしてくれ・・・・・・。」 なんだかイロイロ投げ出したくなってしまった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ややあってなんとか平静を取り戻せた、瑣末事は置いておこう。 聴きたい事があるなら何なりと、との事なのでとりあえず本題にかかる。 坂本「それで、その手術痕の事は何か知っているのか?」 収まりがいいからと、ベッドに腰掛け宮藤を抱きかかえたままの玉藻に問う。 玉藻「あの男曰く、其処に爆薬とやらを埋め込んだと。」 そう言えばあの男、処分がどうのと言っていたがこれの事だろうな。 女医「・・・在りませんね、金属を含んだ異物なら、かなりはっきり写るんですけど。」 先生がレントゲン写真を眺めながら告げた。 それどころか肋骨にすら開かれた痕が無い。 つまり、皮膚のみを切開した偽りの手術痕であると。 玉藻「その様ですね、私が休眠している間の事とは言えあのような小者の虚言を見抜けな かったとは不覚でした・・・・・・」 悔しさと共に安堵のため息をつく。 偽りとはいえ、主の命を握られ続けていたのだ。 その心情は察しきれる物では無いだろう。 宮藤「でも、なんでそんな事を?」 玉藻「恐らくは完全に道具にするため、と思われます。 あの男、周りの人間には己の言う事を聞かさねば気がすまない気質の様でしたから。」 顔を上げた宮藤の頭をなでつつ、悲しげにそう語った。 そう言うことか。 確かに力を持つものを支配下に置くには効果的とも言える手段だ。 しかし、傷跡をつけてまで行ったあの男は・・・・・・。 坂本「正しく、畜生にも劣る外道だな。 ・・・しかし、どうやって? 他にも人は居ただろうに誰も止めなかったのか?」 玉藻「あの島に居た医者と結託していたようで。 一服盛られて眠っている内に行われてしまった様です。 それに他の者とは切り離されていたのでこの事を知る者は居ませんでした。 今、主が使っている飛行脚とやらを持ち込んだ者たちは異常を察してか何かと気に かけては頂けたのですが、それでもあの男の行いを止めるには至りませんでした。 私も先の戦にて力を使い果たし休眠を余儀なくされ、目覚めてからも主の命を支え 続ける事が手一杯で御座いました故・・・・・・。」 そう言って宮藤を抱えなおす、あれではまるで赤子だ。 と、言うか寝てないか・・・・・・? 妙に気に入られたようだな。 話しを戻そう。 坂本「なるほどな・・・、まぁ安心しろ。 此処に来た以上は手出しなどさせはしない。 それに今、我々の隊の長が上層部への報告と抗議に向かっている。 最早、野郎とか言う男に先は無いだろうな。」 玉藻「・・・左様で御座いますか。 此処に来れたことは、主にとって幸運だった様です。 此処には心強い方たちが大勢いらっしゃるようですから。」 そう言って幽かに微笑む。 まさかあの玉藻の前に期待されるとはな。 坂本「買い被りすぎじゃないか? 一度空に上がれば置いてけぼりを喰うのは必至なんだが・・・・・・」 しかし、玉藻はいいえとかぶりをふる。 玉藻「主は、確かに強大な力を持ち、戦いの術に長けております。 ですが、心と体は修羅場に身を置き続けて耐えられるほど強くはありません。 唯、無理に無理を重ね続けてきただけでございます。 それこそ、自らが無理をしているとも気づかぬ程に・・・・・・。」 雪のように白い僕少尉の髪を尾で撫でつつ語り続ける。 玉藻「主の御髪は、戦に出る前は綺麗な黒髪でした。 しかし、戦い続けるうちに次第に色を失い、色あせるに合わせる様に笑みを忘れ 休む事も忘れ、誰かに頼ることも忘れ、戦いに没頭するようになりました。 戦地から帰り、あの島に渡ってからはあの男からの責め苦を受け続ける日々。 あの者たちが手を尽くして心を保とうとしても主に残っていた物はあの男に脅え 続ける事だけとなってしまいました。」 ちょっと待った。 坂本「誰かに頼る事も忘れたとはまるで一人で戦っていた様にも聞こえるが? 他にもウィッチはいた筈だろう。 一体何時ごろの、どこの部隊の話しだ?」 玉藻「二年と少し前、主がまだ八歳になる前の頃で御座いました。 オラーシャと言う国の東部戦線という戦場、その北の端にある回廊と呼ばれた地の 一角を守る砦、第511統合戦闘航空団に主は使わされました。 其処には確かに魔力を持つものが数名おりましたが、主が着任して間も無い頃に 敵の猛攻を受け、主を残して墜されてしまいました。 それからは主一人で飛ばざるを得なくなり、最後の戦までの半年もの間を一人で 守り続けて居ました。」 東部戦線か。 しかも回廊と言えば、陸、空のネウロイが集中し押し寄せる侵攻ルート上の激戦区だ。 さらに、二年前と言えば、損害の虚偽申告が複数発覚し、補給が手間取るようになった 時期でもある。 坂本「それで一人で戦い抜いていたと言うわけか。 それならあの技量にも納得が行く。 回廊と言えば激戦区中の激戦区だ。 随分修羅場慣れしているとは感じたが、そう言うことか。」 女医「でもそれで完全に白髪化するまでって、一体どんな生活だったんですか? 確かに、疲労とストレスを溜め込んで白髪が増えると言う事は在り得ますけど。 普通なら戦闘の前に過労で倒れると思いますが。」 先生が問う。 医者としては聞き捨てなら無い様だ。 玉藻「居なくなった仲間たちが遺した飛行脚を使いまわし、寝食を忘れて飛び続け、戦い 続ける、その様な日々で御座いました。 私も支えはしていましたが、主の持つ膨大な魔力が有ればこそ成し得たことでしょう。 最後の戦にて総て使い果たし、主は一時的に魔力を失い、私は休眠を余儀なくされ ましたが。」 宮藤「あの、失った魔力って取り戻すことが出来るものなんでしょうか?」坂本「起きてたのか。」 やや思案した後、玉藻は語り始めた。 玉藻「可能・・・ですね。 古きより術者と呼ばれるものたちに伝わる行に臨死界行と呼ばれる荒行が御座います。 力、今で言う魔力を一度つかいはたした後、命を落とす寸前まで己を追い込み 肉体の防御本能を利用して魔力を復活、増幅させる業だとか。 成功率は一割以下と言う低確率のため、今行うものは皆無に等しいそうです。 主の場合は偶然その条件が整ってしまった様ですが。」 つまり、一度死にかけたと。 坂本「命を落としそうになるとは一体何があったんだ? ああ、ついでに聞くがそれは女性の術者でもやれるのか?」 玉藻「主は何でも、増水した川に誤って落ちたと。 この行をおこなっていたのは上がりを迎えた女性の術者か男性の術者が主です。 男性は魔力の衰退が無いので単純に魔力の増幅が目的ですが、女性の場合はさらに 力の維持が目的だった様ですので。 嘗ては殺生石にも魔力を流し込みに来る者がそれなりにおりました。 この行の完遂者は元の倍以上、術者によっては数倍の魔力を得る者も居たとか。」 坂本「そうか・・・・・・。」 それはいい事を聞いた。 かなりの危険は伴うが完遂すれば更に強くなれる。 宮藤「坂本さん、やる気ですね?」 宮藤、いつから心を読めるようになった? 坂本「そ、そんな事は無いぞ?」 宮藤「本当ですね?・・・・・・っと。 そういえば、玉藻さんってずっと昔に殺生石になっちゃってたんですよね? どうやって出てきたんですか?」 そうだった、一番聞きたかったのはその事なんだが衝撃的な話しが多すぎて忘れていた。 玉藻「それは主が殺生石に魔力を流し込んだ故、再び世に出る事が可能になったのです。 必要だった力の九割方は主が与えてくれた物でした。 その時の事もお話しいたしましょうか。 ・・・・・・あれは主がまだ四つの頃でした。 魔力と主の目、千里眼を目覚めさせばかりの主は力の制御が出来ず、閉じこもって いたそうです。 見兼ねた母親が術者に相談し主を連れて殺生石まで赴き、魔力を吸い取らせました。 魔力を失えば千里眼も失い、平穏な生活に戻れると思っていた様ですが。」 しかし、そうは上手くいかなかったと玉藻は続けた。 玉藻「私は世に出て直ぐに主を追いました。 しばらくは近くの山に身を置き、主を見守っておりましたが、ある冬の日に凍った池 に主が転落し、再び魔力を得てしまいました、それも元の何倍も強くなって。 それからは、私と契約し山の中で魔力と千里眼の操り方などを教え始めまして。 物覚えが良かったせいか、すぐに操り切れるようになりました。」 宮藤「なんだか妙に水周りに縁がありますね、嫌な意味で。」 玉藻「その様で、泳ぎは達者な方なのですが。」 つまり、臨死界行とやらを二回も完遂した訳か。 元々膨大な魔力を有して居た様だが、最早底が見えんな。 しかし、殺生石に魔力を吸い取らせるとは危険な事をする。 殺生石とは、京を追われ大軍勢に追い詰められた玉藻の前が変じた瘴気を放ち命を吸い尽くす と言われた石だ。 耐性の無い者が瘴気に触れれば即座に命を落とすか重い病に倒れるかのどちらかだとか。 もしや僕少尉の母親は・・・。 坂本「玉藻、僕少尉の家族はどうなっている?」 玉藻「主の母親は私の元に訪れた後、程なくして病に倒れ、他界してしまいました。 恐らく、身を守るために放っていた瘴気に当てられたものと思われます。 父親は妻の死を受け入れ難かったのか、葬儀のあと主を祖父母に預け行方知れずに。 祖父母も老い先が短い事を悟っていたのでしょう。 一年と経たず、当時から魔力を持つものを集めていた軍に主を預けました。 それからは会ってはおりませんので・・・・・・。」 もしかしたらまだご健在かもしれませんね、と締めくくった。 坂本「それでは、今は天涯孤独も同然か・・・・・・。」 宮藤「そうだったんですか・・・・・・。 それじゃぁ、今まで玉藻さんしかそばに居なかったんですか?」 玉藻「戦に出る頃まではそうでもなかったですね・・・。 と、言うよりもむしろ何かしら傍に居ましたね。 主は色々と引きつけ易い気質だったせいか、山に居た頃は妖等に纏わり付かれてました。 軍に入ってからは教官達が着きっきりで主を鍛えてましたし。 何故か女子ばかりでしたが・・・・・・はぁ・・・。」 当時を思い出してか、深いため息をつく。 中々に苦労があった様だ、女子ばかりと言うのが気になるところだが。 宮藤「モテモテだったんですねぇ・・・・・・。 妖怪さんがそんなにいたのも驚きですけど。」 玉藻「普段は層を隔てた所に居ますので人の前に出る事の方が稀ですね。 それ故か、人の子が珍しかったのでしょう。 一緒に遊ぶぐらいなら問題にもならなかったんですけど、余計な事を教える輩とか 体に手を加える輩とか、挙句の果てに五歳児相手に求婚した者まで・・・・・・。」 思ったよりとんでもない事があった様だ。 宮藤「あ、あの・・・・・・余計な事って何を・・・・・・?」 玉藻「山に居た天狗の女子からなのですけど、格闘術や妖術と共に床技まで仕込まれてまして。 同禽などすると、運が悪いと寝ぼけて就寝中や寝起きに手や口で弄り倒されます。 既に数名その被害に遭っておりますのでご注意下さいね。 法則性は在る様なのですが未だに不明ですので。」 坂本「な・・・・・・」 宮藤「うわぁ・・・・・・」 女医「・・・・・・」 一同絶句した。 妖の類に人の倫理を説いても仕方ないが幾等なんでも早すぎる。 女医「・・・・・・それでは、体に手を加えたと言うのは?」 玉藻「これは山の蛇神からなのですが。 魔力を操る際に掛かる体への負担を無くすべく、体内の力の通りを良くしたついでに ソコが自分好みに育つように強化した様で。 膨張率、硬度、耐久力、持久力、形状が人間の限界に位置するとか。 『色素の沈着も無くしたぞ』などど自慢げに告げられた時には流石に我を忘れて シバき廻してしまいました。」 と、[ソコ]を指した。 ・・・・・・まぁ、脚の付根辺りだ。 女医「それは・・・また、御愁傷様です。」 先生、シーツを捲って観察しないで下さい。 坂本「それで五歳児相手に求婚したって言うのは?」 シーツを直しつつ聞いて見た。 玉藻「これは土蜘蛛の女子なのですが、戯れに主の寝床に忍び込んだ際に先の床技を見舞わ れたようですね。 それから癖になったのか、主に事あるごとに責任取れだの結婚しろだの迫るように。 まぁコレも毎回追い払いましたが。」 物凄く遠い目をしていらっしゃる。 玉藻「主がどういう事になっているのかまったく理解しておられないのが唯一の救いですね。 最も、これから先に何かと思い悩む事になるのでしょうが・・・・・・。」 その表情は正しく息子の心配をする母親の物。 今は私とかわらないぐらいの歳の姿だが、重ねた歳月の賜物なのだろう。 どれくらい重ねたのかは不明だが。 宮藤「なんだか、玉藻さんってお母さんみたいですね。」 宮藤もそう感じたらしい。 玉藻は無自覚だったせいか、少々驚いている様だ。 玉藻「母親ですか?、よく解りません。 子を育てた事など私には御座いませんので。」 宮藤「そうなんですか・・・・・・、あ、有難う御座いました。」 そう礼を述べて、宮藤がようやく玉藻から離れた。 玉藻「もうよろしいのですか? 私なら別にかまいませんけど。」 宮藤「いえ、充分堪能させて頂きました。 それに・・・、ほんとうは僕君を抱っこしてあげたかったんじゃないかなーと思って。 まぁ、いつまでもお借りする訳にもいきませんし。」 玉藻「どうして・・・・・・解るんですか?」 今度はかなり驚かされた様だ。 宮藤、そんな洞察力をいつの間に身につけた? 宮藤「いえ、なんとなくなんですけどね。 大切な子が滅茶苦茶頑張ってたんですから、思いっきり抱きしめて誉めてあげたく なるじゃないですか。 『がんばったね、偉いね』って。 だから、僕君が起きたら、思いっきり抱きしめて上げて下さいね。」 玉藻「はい・・・・・・そうしますね。 此処に来れた事は、本当に幸運だった様です。 ・・・・・・主を、よろしくお願いしますね。」 そう言って微笑み、玉藻は僕少尉の中に戻って行った。 しかし、大役を任されてしまった。 私は新兵の扱いには慣れていても子供の扱いはからっきしなんだが。 ・・・そう言えば。 坂本「宮藤、なんで玉藻が僕少尉を抱きしめたがってると解ったんだ? 九尾の狐を驚かせるなど早々出来る物では無いと思うが。」 宮藤「え?・・・あぁ、それは本当になんとなくなんですけど、なんだか抱っこし慣れてる と思いまして。 あと、妙に嬉しそうだったんですよね。 でも子育てはしたこと無いって言ってましたから、やっぱり僕君なのかなーって。」 坂本「なるほどな・・・・・・」 動機は極めて不純だが慰めにはなったと言うところか。 坂本「しかし、九尾の狐と言えば伝説に残る大妖だぞ。 良く飛びつく気になったな。」 まぁ、軍規違反までしてネウロイの巣にお邪魔した事もあるのがコイツだ。 その大物振りには苦労させられる反面羨ましくもあるが・・・・・・。 宮藤「そういえばそうなんですよね、でも恐そうな感じは無かったですから。 それに、あんな一生に一度拝めるかどうかの逸品は逃せませんね。 おっぱいに貴賎は有りませんし。 僕君専用なんでしょうけど・・・・・・凄かったな~、えへへ~。」 前言撤回、こいつやっぱり只のアホかも知れん。 とりあえずこめかみをグリグリしておく。 宮藤「いたいいたい地味に痛いですぅ~。」 坂本「教育的指導だ、馬鹿者。」 そう言えば、先生はさっきからなにをゴソゴソと・・・・・・。 女医「これは・・・・・・末恐ろしいわね・・・・・・ゴクリ。」 生唾まで飲んでる所が滅茶苦茶不安をあおって来るんだが。 坂本「先生、さっきから何・・・・・・を?おおおおお?!」 宮藤「こ・・・・・・こんなになっちゃうなんて・・・。」 女医「これは充分以上に使用可能ね、サイズ的には。」 先ほどから刺激を与えられていたのであろう。 ソコには天を貫かんばかりの高射砲がそそくりたっていた・・・・・・。 坂本「あんた10歳児に一体何やってんですか!」 女医「何って・・・ナニの触診と、確認?」 宮藤「男の人のってこんなになっちゃうんだー、へ~」 坂本「宮藤!、どさくさに紛れて触ろうとするんじゃない! お前にはまだ早いだろうが!!」 宮藤「あ、ウチの診療所ではこういう所の治療もやってましたから時々目にはしましたよ? こうなったのははじめて見ましたけど。」 妙に冷静だったのはそのせいか、じゃなくてだな。 坂本「いい加減にしろ――――――――――――っ!!」 正直な話し、ネウロイとの戦闘より疲れたかもしれない。 しかし、玉藻の不安も最もだと思う。 こんなの相手にしたら壊れるだろ、常識的に考えて・・・・・・なぁ?
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